LINEヤフー株式会社が広告サービス品質に関する透明性レポートの内容と見解

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LINEヤフーが2024年度上半期の広告サービス品質に関する透明性レポートを公開しました。レポートでは、なりすまし型「偽広告」の審査実績が初めて追加され、Yahoo!広告とLINE広告で多くの広告素材が非承認となったことが報告されています。広告アカウント・素材の審査基準、審査プロセス(システムと人的審査)、非承認理由の内訳、なりすまし広告への対応、ブランドセーフティ・アドフラウド対策、透明化法への対応などを詳細に報告しています。また、無効なトラフィックやクリックを排除するための取り組みも紹介され、広告掲載基準の統合に向けた動きも示されています。

広告アカウント

Yahoo広告

  • 2024年度上半期は、4,750件のアカウントを非承認とした。これは2023年度下半期と比較して増加している。
    • 新規申込件数の増加に伴い、「アカウントの登録情報から不正な広告出稿の懸念」の基準での非承認数が増加した。
    • なりすまし型「偽広告」懸念での非承認数も若干増加した。

LINE広告

  • 2024年度上半期は、2,711件のアカウントを非承認とした。これは2023年度下半期より約7割増加した。
  • アカウント開設時の審査に加え、開設後のパトロールの強化を行っており、悪質性の高い広告入稿が見受けられた場合には、アカウントの「利用停止」を行っている。

LINE広告とYahoo!広告の統合

  • 2023年10月1日のLINE株式会社とヤフー株式会社の統合に伴い、LINE広告・Yahoo!広告の広告掲載基準(審査ガイドライン)の統合検討を順次実施している。
  • 2024年6月28日に「食品・健康食品」、7月31日に「化粧品・薬用化粧品(医薬部外品)」の判断基準を統一した。
  • その他の基準についても順次統一を図っていく方針。

上記の点を踏まえ、広告アカウントの審査は、Yahoo!広告とLINE広告の両方で厳格に行われていることがお分かりいただけると思います。 特に不正な広告出稿やユーザーに不利益を与える広告の排除に力を入れている点は評価できるのではないかと思います。 また、LINE広告とYahoo!広告の審査基準統合は、広告主にとってより分かりやすく、透明性の高い広告掲載環境につながることが期待されます。

広告素材の審査基準について

Yahoo広告!

  • 2024年度上半期は、約8,900万件の広告素材を非承認とした。これは2023年度下半期と比較して大幅に増加しています。
    • 検索広告において、「ユーザーの意に反する広告の禁止」の掲載基準で非承認となる広告が増加したことが主な要因。
    • これは、URLの文字列の誤りにより適切に表示されないサイトの入稿が増加したことによるもの。

LINE広告

  • 2024年度上半期は、102,667件の広告素材を非承認としており、2023年下半期からは若干増加しました。
    • 素材の非承認の約8割はクリエイティブ(主に画像や動画)です。

審査プロセス(システムと人的審査)について

Yahoo!広告

Yahoo!広告とLINE広告の審査プロセスは、機械学習を活用した「システム」と「人の目」による審査を組み合わせて、24時間365日実施している。

Yahoo!広告のシステム審査では、広告のカテゴリーに適した審査を実施している。 人的審査では、ガイドラインに関するトレーニングを積んだ担当者が、実際の端末を用いて審査を行っている。

LINE広告

LINE広告では、システム審査により広告に関する様々なデータをリアルタイムで確認できるようになり、問題のある広告をより迅速に制御できるようになった。人的審査では、独自のガイドラインについてトレーニングを積んだ担当者が、実際の端末を用いて審査を行っている。

なりすまし広告への対応

なりすまし広告とは、個人または法人の氏名・名称、写真などを無断で使用し、著名人や有名企業になりすまして、投資セミナーや投資ビジネスへの勧誘などを図る広告のことです。

Yahoo!広告

ユーザーからの削除依頼:2024年度上半期は0件。

アカウント審査:アカウント開設時と開設後の審査において、「なりすまし型『偽広告』懸念」を理由にアカウントを非承認としている。

  • 広告素材審査:なりすまし型「偽広告」が含まれる可能性のある非承認理由として下記を設け、該当する広告を非承認にしています。
    • 「投機心を著しくあおるもの」
    • 「サービス、商品の内容が不明確なもの」
    • 「当社が不適切と判断したもの」
    • 「上記3つのうち未認証のLINE公式アカウントや、個人のLINEアカウントへの友だち追加を促すもの」

LINE広告

ユーザーからの削除依頼:2024年度上半期は0件。

アカウント審査:アカウント開設時と開設後の審査において、なりすまし型「偽広告」と判断されたアカウントを非承認としている。特に、投資や副業の情報提供を訴求し、SNSなどのクローズドチャットに誘導する詐欺懸念のあるサイトが増加しているため、2024年4月より本人確認などを強化し、審査を強化している。

  • 広告素材審査:なりすまし型「偽広告」が含まれる可能性のある非承認理由として下記を設け、該当する広告を非承認にしている。
    • 「未認証のLINE公式アカウントや個人アカウントの友だち登録へ誘導するもの」
    • 「なりすましかどうかは不確定だが投資詐欺疑いが含まれる可能性があるもの」

ブランドセーフティ・アドフラウド対策について(Yahoo!広告)

ブランドセーフティ対策

ブランドセーフティとは、違法サイトなど不適切な内容の掲載面に広告が配信されることを防ぐ取り組みです。

  • 事前審査:広告掲載先サイトやアプリに対して事前審査を実施しています。 2024年度上半期の非承認割合は約21%で、「広告配信先運営者の明示不備」や「サイト閲覧情報不備」による非承認サイトが増加傾向にある。
  • 事後パトロール:広告配信開始後も、掲載面に対する継続的な事後パトロールを実施しています。 2024年度上半期のパトロール結果は以下の通り。
    • URLブロック:約2.6万件 (2023年度下半期比約19%減)
    • サイト停止:約10%減
    • リアルタイムURLブロック:約2.2万件
  • Pre-bidシステム:リアルタイムにURLのブランドセーフティ判定を行い、不適切なサイトへの広告配信を抑制している。2024年度上半期は約1,900件のURLをブロックした。

アドフラウド対策

アドフラウドとは、ボットなどからのアクセスやクリックにより不正に広告費をだまし取る行為です。

  • 24時間体制でのモニタリング:広告配信ネットワーク全体のモニタリングを24時間体制で行い、広告トラフィックの品質管理を実施。
  • 無効なトラフィック・クリックの排除:品質管理により、無効なトラフィック(広告リクエストや広告インプレッション)や無効なクリックを排除。
  • 検知方法
    • Pre-bid方式:広告リクエストやインプレッションの段階で無効なトラフィックを検知
    • 自動フィルター:無効なトラフィックを検知
    • オンライン検出:無効なクリックを検知
    • オフライン検出:無効なクリックを検知

透明化法への対応について

LINEヤフーは、「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」に基づき、経済産業大臣から良い評価を得ている。

透明化法とはデジタルプラットフォームの透明性と公正性を高めるための法律。

透明性を重視した取り組みとして、広告審査と広告配信プロセスの透明化、広告の質に関する「見える化」を推進してきている。2022年度の報告では、特に利益相反の方針を見直し、高評価を得ている。

まとめ

LINEヤフーの広告透明性に対する取り組みを見てきました。インターネット広告が嫌われている昨今ですが、この取り組みは評価されるべきものです。特にFacebook広告で話題になったなりすまし広告の取り組みには目を見張るものがあるのではないでしょうか。ユーザーからの削除依頼が0件はなりすまし広告を見逃さずに広告掲載前の審査で全て非承認にしたと考えることができます。

Facebook広告では被害者も出てしまったため、Yahoo!広告の取り組みを見習い、信頼回復に努めてほしいです。

一方で、私が気になるのはLINE広告のブランドセーフティ・アドフラウド対策が書かれていなかったことです。私が担当した広告でLINE広告と他媒体への広告出稿を行った際にLINE広告だけ異常にコンバージョン率が低いケースが複数件発生しました。

LINE広告の担当者に聞いてみてもブランドセーフティ・アドフラウド対策は特に取り組んでいないという回答だったので、ブランドセーフティ・アドフラウド対策はもっと力を入れてほしい点です。LINE広告はボットなどの不正クリックにやられているのではという疑念が今でもはれていません。

今年度以降もこの取り組みはさらに良くなっていくことを期待したいと思います。

参照:広告サービス品質に関する透明性レポート
https://www.lycbiz.com/jp/service/ly/adqualityreport

著者・監修者

広告運用歴20年。小規模〜大規模アカウントまで幅広く経験。これまで30種以上の業種・100以上のアカウントに携わり、多くのアカウントの目標達成、広告パフォーマンス改善を実現。元Google広告トップコントリビューター。GoogleやAmazonに招待され渡米経験あり。書籍「なぜ、あなたのウェブには戦略がないのか?」「Amazon広告打ち手大全」。社会構想大学院大学 広報・情報学修士(専門職)

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