ファンダメンタルズ×テクニカルマーケティング Webマーケティングの成果を最大化する83の方法 (著者:木下 勝寿)

書籍紹介
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ファンダメンタルズ×テクニカルマーケティング Webマーケティングの成果を最大化する83の方法では戦略的かつ人間中心的な「ファンダメンタルズマーケティング」と、データ駆動型で最適化を重視する「テクニカルマーケティング」の統合について書かれています。

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ファンダメンタルズマーケティングとは

商品そのものやユーザーのペルソナ、インサイト(深層心理や感情)を分析し、コミュニケーション戦略(「誰に」「何を」「どう伝えるか」)を設計すること。これは、マーケティングの「なぜ」と「何を」を深く理解すること、すなわち提供価値とその対象者を本質的に捉える活動である。人間や感情への理解に基づく、従来型のマーケティングアプローチに近い。

テクニカルマーケティングとは

クリック率(CTR)、コンバージョン率(CVR)、キーワードなどの数値化・分析可能なデータに基づいて、コミュニケーションを設計し、最適化していくこと。これは、マーケティングの「どのように」に関わり、施策の効率と効果を最大化する活動である。利益を1円単位で計算しながら運用することも含まれる。

シナジーが重要な理由

この書籍ではファンダメンタルズマーケティングとテクニカルマーケティングのどちらか一方だけでは不十分で、シナジーが重要であることが述べられている。その理由として以下の3つがある。

  1. ファンダメンタルズは戦略的な方向性を提供する。これがなければ、テクニカルな最適化は目的を見失い、根本的に間違ったメッセージやターゲティングを改善することはできない。テクニカルマーケティングは、既に売れているものをさらに効率化する手法であり、売れないものを売れるようにはできない。
  2. テクニカルは、デジタル環境における効率的な実行とスケーリングに必要な、データに基づいたフィードバックを提供する。これがなければ、ファンダメンタルズに基づいた戦略は精度を欠き、測定可能な投資対効果(ROI)を得ることが難しい。
  3. 成功のためには、両者の間を往復するプロセスが必要となる。まずファンダメンタルズ(戦略策定)から始め、テクニカルな手段を実行し、データで最適化を図る。そして、最適化が頭打ちになったり、市場環境が変化したりした際には、再びファンダメンタルズの領域に戻って戦略を見直す必要がある。

鳴海の経験上だと小さな会社などでは、頭では理解できていても戦略はどうやって立てたら良いのか?といった悩みやGoogle広告を依頼する場合ファンダメンタルズの説明を飛ばしてテクニカルだけで広告を評価するといった会社は意外にも多いような気がします。広告が良い成果が出るかどうかは実はファンダメンタルズに依存している部分もあるので、広告の成果が出ない=運用が良くないと言えない点も注意が必要です。

逆にファンダメンタルズを蔑ろにしていても、テクニカルだけで成果が出ている場合もあるでしょう。その場合は良い時期が長く続くかを確認してみましょう。ファンダメンタルズを疎かにしている場合、成果の良い時期は長くないでしょう。

【ファンダメンタルズ】戦略的順序:「誰に」→「何を」→「どのように」

コミュニケーション戦略を構築する上で、順序を守ることの重要性が書かれています。まずオーディエンス(「誰に」)を定義し、次に伝えるべきメッセージ/USP(「何を」)を決定し、最後に具体的な表現方法やクリエイティブ(「どのように」)を考えるべき。「誰に」「何を」が定まらないまま「どのように」から着手すると、効果のないコミュニケーションに陥ると指摘されています。

【ファンダメンタルズ】深いユーザー理解

ユーザーニーズの9段階分類

ユーザーが抱える問題やニーズに対する認識度、解決への行動段階に応じてユーザーを9段階に分類するツールが紹介されています。これにより、各段階のユーザーに合わせた適切なコミュニケーション設計が可能になります。

  1. 対策の必要性に気づいていない
  2. 対策の必要性に気づいてはいるが 「悩みや痛みは一時的なもの」だと思っている
  3. 悩みや痛みは一時的ではないと思っているが、何も手を打っていない(探してもいない)
  4. 対策を色々検討し始めている
  5. 対策を色々検討してかなり詳しい状態
  6. 対策の手を打ち始めた(何らかの商品を買った)
  7. 既にお気に入りの対策のための商品があり、満足している
  8. お気に入りの商品はあるが、「他にもっと良いものはないか」と思っている
  9. 色々使ったが結局満足するものはなかった

従来のペルソナ設定への批判

詳細なデモグラフィック情報に偏重した従来のペルソナ設定手法に対して、書籍では疑問を呈しています。代わりに、製品が解決する中核的な課題(例:「しわに悩んでいる」)や製品のUSP/ベネフィットを起点とし、その製品にとって意味のある「最大公約数」的なターゲット像を設定すべきとしています。過度に詳細化されたペルソナがかえって本質的な市場ニーズを見えにくくし、リーチを限定してしまうリスクが指摘されています。

鳴海の経験上だと細かいペルソナはリーチを限定する点については理解できますし、中核的な課題にフォーカスをする点についても理解できます。自分の経験だとメンズの洋服を販売しているECサイトだと、顧客は男性しかいないと思われがちですが実は女性も多く購入していたのです。

詳しく分析をしてみると旦那の代わりに購入をしていたり、推しのタレントなどの著名人にプレゼントとして購入していたことが分かりました。メンズ服だから男性だけに広告を出せばいいという考えでは、こういった層にはリーチできなかったでしょう。中核的な課題で考えること大事ですが、従来のペルソナで詳細化する場合はペルソナをいくつか作って実行するとリーチが限定されることを防ぐことができるので、その方法で対応するのも良いでしょう。

直接インタビューの重要性

データ分析だけでは得られない、予期せぬインサイトを得るために、1対1のユーザーインタビューが極めて有効であると述べられています。

鳴海の経験でも前述のようにメンズ服販売のECサイトでも女性顧客にアンケートを取って事実が判明した経緯があるので、直接顧客やユーザーに聞くというのは有効です。

【ファンダメンタルズ】中核メッセージ(USP)の定義

USP(Unique Selling Proposition)の源泉として、以下の4つのタイプが挙げられ、市場の成熟度に応じて選択すべきUSPが変化することも示唆されています。競合他社が容易に模倣できないものが真のUSPであると強調されている。

  1. 「他社商品にはない便益を与えられる」or「今までになかった便益を与えられる」
  2. 「他社商品よりも高い便益を与えられる」
  3. 「実績・権威性などの付加価値がある」
  4. 「金銭的お得感がある」

鳴海の経験上も模倣しにくいUSPは長期的に良い結果が維持しやすく感じます。一番分かりやすいのは4番の金銭的お得感で、価格が安いことで選ばれている場合は競合他社もその値段を追随しやすい場合、パフォーマンスが落ちやすいです。逆に長期間パフォーマンスが良い企業はUSPを1つだけ満たすのではなく、上記4つのうち複数個を満たしている場合が多いです。

【テクニカル】利益主導型の最適化

基本公式:LTV > CAC(または CPO)

顧客一人当たりの利益を「LTV(顧客生涯価値) ー CAC(顧客獲得単価) / CPO(注文獲得単価)」として計算し、これを最終的なKPIとすることの重要性が強調されている。これにより、クリック数やコンバージョン数といった中間指標(Vanity Metrics)に惑わされず、事業の収益性に直結した判断が可能になる。

顧客一人当たり利益の先へ

顧客一人当たりの利益を最大化することが、必ずしも「全体利益」の最大化にはつながらないという視点が提示されている。全体利益は「(一人当たり利益)×(獲得顧客数)」で決まるため、場合によっては一人当たり利益率を多少犠牲にしてでも、より多くの顧客を獲得する方が全体利益は大きくなる可能性がある。マーケターは、利益率と獲得件数の最適なバランスを見つける必要がある。これは、単なるLTV > CACのルールを超えた、損益計算書(P&L)に基づいた洗練されたビジネス最適化のアプローチを反映している。

データに基づくクリエイティブ改善

A/Bテストやヒートマップなどのツールを活用し、直感ではなくデータに基づいて科学的にクリエイティブを改善していく手法が述べられている 。広告コピーの効果分析(例:「たった8文字で売上1.5倍」)も含まれる。

PDCAとクリエイティブ疲弊

クリエイティブの継続的な改善プロセス(PDCA) と、最適化を続けても効果が頭打ちになる「クリエイティブ疲弊」の概念に言及している。この段階に至った際には、再びファンダメンタルズの領域に戻り、戦略を見直す必要性を示唆している。

IR資料

実際にどういった指標を見ているのかはIR資料が公開しているので参考にしてみると良いと思います。参考になる点があると思います。

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著者・監修者

広告運用歴20年。小規模〜大規模アカウントまで幅広く経験。これまで30種以上の業種・100以上のアカウントに携わり、多くのアカウントの目標達成、広告パフォーマンス改善を実現。元Google広告トップコントリビューター。GoogleやAmazonに招待され渡米経験あり。書籍「なぜ、あなたのウェブには戦略がないのか?」「Amazon広告打ち手大全」。社会構想大学院大学 広報・情報学修士(専門職)

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