デジタル時代のブランド戦略 (著者:田中 洋)

書籍紹介
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デジタル時代におけるブランド戦略の変遷と将来について考察した書籍になります。各章ごとに著者が変わり、各著者は教授、准教授、博士なのでアカデミックな内容を学ぶことができます。

目次は「デジタル時代のブランド戦略」「ブランド研究の系譜」「消費者行動とブランド戦略」「社会的自己とブランド戦略」「デジタル時代のブランド・リレーションシップ」「戦略的ブランド・コミュニケーション」「リキッド消費とブランド戦略」「デジタル生活空間とブランドの成長プロセス」「デジタル時代のセンサリー・ブランディング」「デジタル技術を活用したブランド顧客管理戦略」「デジタル時代の高級車ブランド戦略」でデジタル化が急速に進む時代において、企業がどのようにブランドを構築し、価値を高めていくべきかについて多角的に学ぶことができます。

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信号化と理念化

この書籍ではデジタル時代にブランド価値を高めるための方向性として、「信号化」(信号化)と「理念化」(理念化)という2つのアプローチが提唱されています。

信号化とは、できるだけ直接的かつ明快に顧客のニーズに応えようとするコンセプトを持つブランドのことです。消費者は意思決定にかかる時間やコストを短縮化しようとするため、ブランドは短時間でメッセージを伝え、その内容も単純かつ明快で消費者に「刺さる」ようにする必要があります。

Yakult1000/Y1000の例のように、明確な顧客ベネフィットを持つブランドは、メタファーを用いたブランド・イメージ広告に頼らずとも成功できる可能性を示唆しています。オンラインのブランドにおいては、「便利だ」「使いやすい」と顧客が体験を通じて理解しやすいことが特に重要になります。

理念化とは、そのブランドを提供する背景にある種の理念や哲学を持っているブランドのことです。直接的なベネフィットがない場合でも、消費者はそのブランドの理念や考え方に共感し、購買や使用に至ることがあります。

広告運用者が学ぶべきポイント

情報過負荷と消費者の「やり過ごす」特性への対応

現代は情報過負荷の状況にあります。消費者は多くの情報を「やり過ごす」傾向があります。また、インターネット広告はウェブサイト上で忌避される傾向も強く、マス広告のように注視されにくいとされています。広告運用者は、これらの消費者の特性を踏まえた広告戦略が求められます。

  • 短時間で「刺さる」メッセージ
    • 広告メッセージは、できるだけ短時間で単純かつ明快に消費者に伝わるように工夫する必要があります。Google検索やYahoo検索では一生懸命考えた長い見出しも全てが表示されるとは限りません。長い見出しや説明文は省略されて表示される場合もあるので、短時間で刺さるあるいは情報過負荷にならないように広告を作成しなければいけないと考えます。
  • ターゲット層への最適化
    • 特定の興味関心やニーズを持つターゲット層に絞り込み、関連性の高い広告を表示することで、消費者の注意を引きやすくなります。誰に広告を見てもらいたいかを考えるのと同時に誰に広告を見てほしくないかを考える事も重要です。
  • 広告クリエイティブの多様化
    • 同じターゲット層に対しても、異なるメッセージや表現方法の広告クリエイティブを試すことで、消費者の反応を探り、効果的な広告を見つける必要があります。

消費者の「交換記憶」とブランド想起

消費者は情報を「どこで」得られるかを記憶するようになっており、ブランドそのものを記憶するのではなく、検索エンジンやSNSなどでどのように検索するのが良いかを記憶する傾向があります。広告は、「どこで情報を得るか」という接点として重要な役割を担うので、以下の戦略が大事になります。

  • 検索キーワード戦略
    • 消費者がブランドや製品・サービスを検索する際に使用する可能性のあるキーワードを網羅的に洗い出し、適切なキーワード戦略を立てることが重要です。競合ブランド名、一般的な製品カテゴリ名、具体的な悩みやニーズに関連するキーワードなどが考えられます。
  • SEOとの連携
    • 検索連動型広告だけでなく、オーガニック検索 (SEO) でも上位表示されるように対策を行うことで、消費者の目に触れる機会を増やし、ブランド想起を促すことを検討する。
  • 指名検索の促進
    • 広告クリエイティブやランディングページにおいて、ブランド名を積極的に露出させ、消費者にブランド名を覚えてもらい、指名検索を促すように工夫するなど。

メガ化、プラットフォーム化、エリア・ブランド化の流れと広告戦略

企業社会においては、グローバルなメガ企業への集約、有力なプラットフォーマーによる個別ブランドへの影響、エリアごとのローカル・ブランドの台頭という3つの流れがあります。広告の運用も、これらの流れを考慮に入れて運用することができるのではないでしょうか。

  • メガ企業との競争
    • 大手プラットフォーマーやメガ企業のブランドと競合する場合、自社の強みや差別化ポイントを明確に打ち出した広告戦略が求められます。昨今、ほとんどのキーワードでECプラットフォーマーであるAmazonの出稿が目立っていたりするので、差別化ポイントは必要になります。また、時価総額数兆円の企業と広告で競うケースもあるでしょう。その場合も同様ですね。
  • エリア・ターゲティング
    • 地域密着型のビジネスを展開している場合、エリア・ターゲティング機能を活用しましょう。特定の地域に住む消費者に効率的に広告を配信します。エリア毎にキャンペーンを分けるとデータは分散してしまいますが、狭い範囲でのデータを取ることができます。それによって新たな発見やエリア毎に傾向に違いがあったりします。

デジタル社会における「社会的自己」の変化

SNSの普及により、消費者は常に他者からの評価を意識し、「見せたい自分像」を表現する傾向が強まっています。しかし一方で、過剰な自己演出は幸福感の低下や社会的評判の毀損につながる可能性も指摘されています。広告運用者は、以下の点に留意した広告が必要になるでしょう。

  • 共感を得るメッセージ
    • 過度な演出や誇張表現を避け、消費者の共感を得られるようなリアルで誠実なメッセージを心がけると良いでしょう。煽ったり、期待感だけ高めて購買後にがっかりといったことにならないようにメッセージを発信することが重要です。
  • UGC (ユーザー生成コンテンツ) の活用
    • 消費者自身が作成したコンテンツを広告に活用することで、信頼性や共感性を高めることができます。

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著者・監修者

広告運用歴20年。小規模〜大規模アカウントまで幅広く経験。これまで30種以上の業種・100以上のアカウントに携わり、多くのアカウントの目標達成、広告パフォーマンス改善を実現。元Google広告トップコントリビューター。GoogleやAmazonに招待され渡米経験あり。書籍「なぜ、あなたのウェブには戦略がないのか?」「Amazon広告打ち手大全」。社会構想大学院大学 広報・情報学修士(専門職)

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